「心当たりなんてないですってば! まだ早朝で、私はベッドで寝ていたんです。そうしたら突然魔界に落っこちて……こっちは大迷惑ですよ!」
腕組みをしてプンスカ怒ってみたけれど、わざとらしかっただろうか?
魔王様は『ふうん』と鼻を鳴らした。
全て見透かされているみたいで居心地が悪い……
魔王様は読心術みたいな魔法は使えないよね? 戦闘魔法じゃないから。
「と、とにかくそういうわけで、さっさと家に帰してください!」
魔王様がギョッとした。
どうも形勢逆転できたらしい。全然うれしくないことだと、このあとすぐに判明するんだけど……
あの謁見の間での出来事が思い出された。
そうだよね。あれを連日繰り返されるのは、さぞかし大変だったんだろうな。
私に逃げられたくないわけだ。
けれど帰してもらえないと、今度は私が困ってしまう。