「脳貧血だったみたいです」

「そうでしたか」


そろそろ起き上がってもよさそう。


背もたれの上部に捕まって、ゆっくり上体を起こしてみた。


「たぶんもう大丈夫です」


そこへレオさんが戻ってきた。腕にタオルをかけ、両手で桶を抱えている。


「ご所望のものを持ってきましたよーっと」


レオさんは桶をリナさんに手渡し、タオルをソファのアームレストにかけた。


「おっ、ミクル様、体調戻った? じゃあ、俺は今度こそ魔王様の花嫁に相応しい部屋を作ってくるわ」


レオさんは鼻歌を唄いながら階段を上っていった。


ご機嫌なはずなのに、短調のメロディを歌うからチグハグだ。


「足を失礼します」


リナさんが私の足下に湯桶を移動させて、汚れを洗い落としてくれた。


「爪が割れてしまっていますね」


タオルで拭くときに、その爪だけは軽く押さえるだけにしてくれた。