「ここなら誰にも気づかれないからね。万一気づかれたとしても、声までは聞こえないし」


今このときも、この真下では大騒ぎしているはず。


それなのに、魔王様はすっかり落ち着き払っていた。


「それにしても、式典で強行手段に出てくるとは思わなかった。今回はミクルを標的にしたからなー。これは僕を対象にしたときよりも、厳しい処罰を与えないとね」

「し、処罰!?」

「ミクルを殺すつもりだったんだ。当然」


私とふたりきりだっていうのに、魔王様が魔王の顔をしている。


「僕はミクルとしあわせな結婚生活を送るって決めてるんだ。そのためにも、二度とこんなマネをしでかす気が起きないように、きっちり制裁を下しておかないとね。母さんにも釘を刺されてたことだし、丁度いい」


あっ、魔王様は落ち着き払ってなんかいない。静かに怒っているんだ。


だ、大丈夫かな……? 大災害クラスの何かをするつもりじゃ……