「緊張してる?」
「はい、少し……あー、ウソです。だいぶしてます」
「僕はドレスを試着したミクルを見るのが楽しみで仕方ない」
魔王様が微笑みかけてきた。
「どうせなら、本番と同じようにメイクもしてもらおうか?」
私は声をひそめた。
「魔王様、別棟にいるときの顔に戻っちゃってますよ。もっと魔王らしい顔をしないと」
「ミクル限定でデレるなら問題ないんじゃない?」
すかさず背後から『ないですね』と援護が入った。
「当日はヘアアレンジはどうするんだろ? こういうときってアップするのかな? うわっ、ミクルがこれ以上かわいくなっちゃったら大変だ!」
か、かわいい!?
何言ってくれちゃってるの、魔王様?
……あっ、そっか! 今日はそういう方向で行くんだ。
だったら、私も余裕があるフリして、聞き流しておけばいいんだよね?
「ま、魔王様は? 魔王様も今日試着するんですか?」
「うん。並んだときのバランスも確認したいんだって」