魔王様が手のひらを上に向け、私に差し出してきた。


「ミクル、行こうか」

「はい」


私はそれに自分の手を重ねた。


いつものデートのときとは違う緊張感。


空気がピリッとしている。


ひとり例外はいるけれど……


「土産話、楽しみにしてるー」


いつもはレオさんと一緒に見送る立場なのに、今日はレオさんに見送ってもらった。


新鮮な気分。


リナさんは、魔王様と私の後ろをついてきてくれている。


玄関から回廊に出たときから、魔王様は魔王の顔になった。眼光がキリリッとしていて、口元も引き締まっている。


私もここから魔王様の花嫁の顔にならなくちゃ……


そう思ったものの、それってどんな顔?


とりあえず、おどおどしてるのはダメだよね?


威嚇は魔王様がしてくれるんだから、私は余裕あるフリでもしていればいいのかな……