「魔王様に恋心を抱いているご令嬢って……?」
魔王様がこのときになって初めて、私が何に引っかかっているかに気がついたらしい。
「そ、それは……でも、僕は……」
「だけど、ミクル様は何の心配もいらないって。『魔王様の寵愛はぜーんぶ私のものよ!』って、魔王様のマーキングを見せびらかして、蹴散らしてこいって」
「仮縫いドレスの試着しに行くだけのはずが、それだとケンカを売りに行くみたいじゃないですか!」
「対等じゃないから、ケンカになんかならないよ。『一方的に見せつけてこい』って言ってんの」
「レオは黙って。ミクル、ミクルは普通にしててくれればいい。『ミクルに手を出すな』って威嚇は僕の仕事だし、ご令嬢のことは忘れて。僕は、毎日城にいてもミクルのことばっか考えてる」
レオさんが『確かに』と笑った。
「仕事さえ終わったら、ミクルに会いたくて、真っ直ぐ帰ってきてる。他の令嬢からの誘いなんて、相手にしたこともないし、これからもしない」
誘い!? さらっと新事実が出てきてるんですけど?