「あっ、お代は結構よ。私からの誕生日プレゼントだと思ってくれれば……」
「何が『お代は結構』ですか。当たり前でしょう。母上が毎日リナに頼んでいるもの、一体誰が支払ってると思ってるんです?」
「何よ、魔王のくせにケチ臭いこと言うのね」
「母上こそ、前・魔王のくせに、息子にたからないでください」
「なら、誕生日プレゼントは他にほしいものでもあるの?」
「いえ、特にないですけど……」
「そうよね、貴方は昔から物欲がなかったものね。そう思うと、今回は生地を『買ってきてほしい』だなんて、逆に私へのプレゼントだわ。ふふっ」
前・魔王様がほんの一瞬、母親の顔になった気がした。
「礼服に仕立てる時間も必要ですものね。なるべく急ぐようにするわ」
前・魔王様はとびきりの笑顔を見せ、ドロンと消えた。