私は、反射的に顔を上げた。
「えっ、あっ、おはようございます!」
転移魔法は静かに現れるから、魔王様にしろ、前・魔王様にしろ、毎回驚かされてしまう。
「リナ、今日の配達分はそれ?」
「そうです」
リナさんには全然驚いた様子がなかった。
もしかして、リナさんは前・魔王様が来るってわかっていたのかな?
でも、驚いていないのは単にリナさんの性格のような気もする。
どっちなんだろう?
使い魔とその主人のつながり方は、何度説明してもらっても、今ひとつ理解できていないでいる。
リナさんは日用品と食料品の山からいくつか抜き取り、立ち上がった。
「ご依頼のものです」
「ありがとう」
リナさんから受け取ったものを確認すると、前・魔王様は魔王様と私を見た。
「それで? 貴方たちがこんな早朝にこんなところにいるってことは、私に何か話したいことでもあるのかしら?」
「さすが、母上。ご明察の通りです。お願いがありまして」