けれど、前・魔王様の突撃訪問があった日だけが例外で、私は例え雑談をしていても、手はしっかり動かすようにしている。
でないと、リナさんから叱られはしないまでも、注意はしっかりと受けるから(それも、私ではなくレオさんが)。
「ミクル様って、俺に厳しくなってない? リナさんのマネとかしなくていいんだよ?」
「そんなつもりじゃないです。ただ魔王様が可哀想だなって……」
あっ、しまった! こんなことを言ったら……
ほら、やっぱり! むー!
レオさんがニヤニヤして、私のほうを見てきた。
「また! レオさんが私のことを揶揄うと、私は『魔王様を避けるかもしんない』ですよ?」
「いやー、それはもう心配してない。だって、魔王様とミクル様はその段階から1歩進んだじゃん」
「す、進んでなんかいませんっ」
何て誤解をしてくれてるのー!?
「そう? あのときは、ミクル様から魔王様のことを心配する言葉を初めて聞いた気がしたんだよね。それまでずっと魔王様の一方通行だったのに……」