「魔王様?」


私は上半身を前に倒して、隣に座っている魔王様の顔を覗き込んだ。


「……だから言いたくなかったんだ」

「私も、」

「ダメ! 許可できない」

「式典中ずっと魔王様のそばを離れないって約束しますから。そうしたら、魔王様が守ってくれますよね? 何といっても、魔王様なんだから」


魔王様が肺の底からため息を吐き出した。


「そうだけど……」

「魔王様はきっと、当日はカッコいい衣装を着るんですよね?」

「カッコいいかどうかは主観の問題だから、僕では答えようがないけど……」

「でもいつもとは違うんでしょ?」

「まあ……」

「見たいなー」

「支度は城ですることになると思うけど、ミクルに見せるために転移魔法でちょこっとだけ抜けてくるよ」

「式典中のパリッとしてる魔王様を見たいなー」

「…………」

「見たいなー」

「……僕もミクルの正礼装姿を見てみたい」

「へっ、私!?」