そんなこんなで、私と魔王様は今その焼き菓子を食べている。
今日は、『花がちょうど満開できれいって教えてもらったんだ』という庭園に来ている。
『誰から?』って質問したかったけれど、女の人だったら余計に落ち込むだけなので止めておいた。
とっくに閉園時間を過ぎていて誰もいない庭に、こっそり転移して入りこんだ。
魔王様が花木を燃やさないように注意しながら、火炎魔法でライトアップしてくれている。
いつもの私なら、ときめきまくったことだろう。
けれど、今日だけは魔王様が私のために……ってしてくれることが全部全部ツラく感じる。
魔王様の説明は、レオさんが予想した通りだった。
けれど、魔王様はレオさんよりもずっと丁寧に、そして私が悲しむことがないように心を砕きながら話してくれた。