ティーセットを片付けたレオさんが、ソファに座ったまま放心していた私に声をかけてきた。


「んじゃ、掃除に戻ろうか? ミクル様、聞こえてる?」

「……えっ? あっ、はい、聞こえてます! 掃除……掃除ですね!」


けれど、掃除には全くと言っていいほど身が入らなかった。


頭の中が、嫌な考えでいっぱいになってしまった。


前・魔王様も別宅に避難しなければならないほど迷惑していたなんて(行きたくて行くらしいけど)。


魔王様はもっとなはず。


魔王様が連日、疲れて帰ってきていた理由はこれだったんだ……


憂鬱そうにお城へ出掛け、疲れて帰ってくる魔王様……


私を唯一の花嫁に選んだことを、面会でねちねちと責められて……


魔王様と前・魔王様の会話から、魔王様は臣下からの要望を突っぱねてくれていると推察できる。今のところは……


そう! 『今のところは』に過ぎないんだ。


隠居生活を送っている前・魔王様と違って、魔王様は別宅に逃げ隠れるなんて手段は取れないと思う。


となると、いつかは根負けしてしまうかもしれない。