「ふたりはこのことを知ってたんですか?」
「『知ってた』っていうか、まあ、今の会話聞いてたら、何となくわかるよねー。『魔王様を説得してくれ』って、前・魔王様のところに訪問客がひっきりなしにきてんでしょ」
「……『説得』」
「うん。『出自が不明のミクル様は側妃にして、きちんとした令嬢を正妃にしろ』なのか、『ミクル様が正妃でもいいけど、側妃は複数人娶れ』なのかまではわかんないけど」
息ができなくなるほどの衝撃だった。
魔王様が他の人と結婚しちゃうの?
私は召喚された翌日に、魔王様と友達になることを目指していたはずだった。
友達なら、魔王様が他の誰と結婚しようと祝福してあげればいいじゃない?
そうじゃないの?
でもそれは到底できそうもない……
もう知らないフリを決めこむことはできなくなっていた。
「魔王様が『説明する』と言っていたんです。レオが話すことではありませんよ」
リナさんがたしなめてくれたけれど、時すでに遅し。
私はしっかり聞いて知ってしまった。