「私は、貴方の選択を尊重するわ。自分がとやかく言えるような立場でないのは、重々承知しているしね。だけど、自分できちんと対処してちょうだい。私から貴方への要望はそれだけ」
「本当に? 反対しません?」
「私が? するわけないわよー。当たり前でしょう?」
前・魔王様はケラケラ笑った。
「しばらく身を隠すことにするから、その間に何とかしておいてちょうだい」
「『身を隠す』って、どこにですか?」
「あっちの別邸よ」
「『あっち』に行かれるんですね……」
「そのぐらい迷惑を被ってると思いなさい」
「行きたくて行くくせに……」
「えっ、何か言った?」
「いいえ、何も」
魔王様が肩をすくめたのを横で感じた。