「貴方が不在かどうかなんて、私は知らなかったわ」
「そんなはずがないでしょう!」
「仮にそうだとしても、貴方の花嫁に挨拶しに来ただけよ。私にとっては義理とはいえ娘になるわけだから」
「母上は信用できません」
義理の娘として歓迎するような言葉はなかった。
でも、少なくとも姑っぽい嫌味は言われていない。
というか、まだサロペットの話ぐらいしか、まともにしていないのだ。
魔王様の腕から顔だけにじり出した。
「ぷはっ! 魔王様が心配するようなことはひとつもなかったです」
「ほら、ミクルさんの言う通りよ」
そこで『ふふん』と勝ち誇ったように鼻を鳴らすもんだから、私を抱きしめる魔王様の腕に力が入る。
ぐえっ!
バシッ! バシッ!
「く、苦しっ」
こっちも叩く手に力が入る。
「あっ、ごっめーん」
魔王様は力を緩めてくれたものの、依然として解放はしてくれなかった。