ホントなら『苦しいからやめてください』って抗議したいところだ。


もちろん苦しい原因は、魔王様の腕の力ではなくて(正直なところ、それもちょっとはあるけれど)、動悸のほう。


だけど、魔王様は私のことを抱きしめながら、朝なら『ミクルを連れていけたらいいのにー』とか『ミクルと離れたくなーい』とかってボヤくし、夕方なら『ミクル不足になったー、補充させてー』ってため息を吐くのだ。


そんなこと言われてしまったら、強く出ることなんてできないじゃない?


だからその時間だけは、私は黙ったまま、気をつけの姿勢で胸の苦しさに耐えている。


それが今の私の精いっぱい。


それなのに、最初のうちは外国人の挨拶みたいな軽ーいハグだったはずが(それでも日本人の私は、うひゃー! となっていたのに)、ハグする時間が日に日に延びていっている。