「と、ところで魔王様は毎日お城に行くんですね。魔王様には休日ってないんですか?」
「こんなの、今だけだよ。本来だったら別棟で仕事する日もあるし、休日だってもちろんあるはずなんだけど……」
魔王様は、長いため息を吐いた。
眉間に魔王様のストレスが現れている。それもかなり深く。
「ミクルともゆっくりデートしたいのになー」
『ゆっくりデートしたい』という魔王様の言葉に反応して、私の心臓が大きく跳ねた。
「お、お仕事が最優先ですからっ、仕方ないですよ!」
夜景を見に行ったあの日から、私は心臓病を患ってしまっている。
非常に厄介な病気で、困っている。
今だってそう。動悸がする。
私はたぶんこの病名を知っている。
でも、知らないフリを決めこむことにした。
だって、対処方法がわからないから。
魔王様の花嫁として召喚されている上、さらにこの病を確定してしまったら……
うわー、ダメだって! 今だって、こんなに苦しいほどドキドキしてるっていうのに!
せっかく魔王様だって、『18になるまで焦らずいこう』って言ってくれたんだから、ゆっくりでいいんだ。