しばらくは黙って、魔王様に連れていかれるままに歩いていた。


くねくね折れ曲がる長い石廊下を、よく知りもしない男の人と無言で歩き続けるのは気詰まりだった。


「きゃっ! 痛ったーい」


石と石の隙間に足の指が挟まってしまった。


暗くて見えないけれど、たぶん爪が割れた。


「どうしたの? 大丈夫?」


ここに落ちてきてから、溜まりに溜まっていた何かが一気に溢れた。


「大丈夫なんかじゃないです! 暗くてよく見えないし、靴を履いてないのにこんな歩きにくいところを歩かなきゃなんないし!」

「わー、わー、しーっ!」


真剣に慌てる魔王様を見て、少し胸がすいた気がした。


「ぷぷっ、ごめんなさい」


すんなり謝罪の言葉が出せた。


「もう大きな声は出さないでね? ところで、『靴を履いてないのに』ってことは、いつもは履いてるんだね?」