…そんな訳なので。

今日からしばらく、寿々花さんの好き嫌い克服計画を実行することにした。

…と言っても、そんなに難しいことはしない。

好き嫌いを克服する方法なんて、一つしか思いつかない。

それは勿論…。





「やっぱり、食べて克服するのが一番だよな」

ってか、それ以外に方法あるのか?

好き嫌いの基本って、食わず嫌いにあると思うんだよ。

いや、俺が生牡蠣を嫌いなのは、当たったからなんだけど。

でも寿々花さんの場合、きのこを食べて具合が悪くなったとか、アレルギーがあるからじゃなくて。

単に、子供舌故の食わず嫌いなんだと思う。

そりゃ、俺がこの家に来るまで、毎日カップ麺とレトルト食品で生きてたような人だからな。

食わず嫌いも多いだろうよ。

でも、食わず嫌いってのは意外に良いことだと思う。

だって、食べたことなくて嫌いなだけだったら。

「あれ?食べてみたら意外と美味しいじゃん」ってなるかもしれないだろ?

一回そういう経験をしたら、それを境に、途端に食べられるようになったりすることって、結構ある。

子供の時は嫌いだったけど、大きくなってから食べられるようになったものって、誰にでもあると思うんだよ。

むしろ、何で昔は嫌いだったのか分からないほどハマっちゃう、みたいなことも多々ある。

味覚が大人になったってことだな。

しかし寿々花さんは、これまで酷い食生活を送ってきたものだから。

味覚が大人になる機会が、今日に至るまで一度もなかったのだろう。

その結果、今の好き嫌いの多さに繋がっている。

実際、ハンバーグやカレーに、嫌いな野菜をすり下ろして入れた…程度なら、普通に食べてるもんな。

本当に、生理的に舌が受け付けないほど嫌いな食べ物なら。

すり下ろそうが微塵切りにしようが、すぐに気づいて吐き出すからな。

それがないってことは、やっぱり食わず嫌いなんだと思うんだよ。

…従って。

まずは勇気を出して、食わず嫌いを克服してみよう。

そこで、俺は寿々花さんの為に、腕を振るってみた。

寿々花さんの嫌いな食材を、ふんだんに使った料理の数々を。