お土産って…イギリス旅行のお土産?

「いや、そんな…。悪いですよ」

旅行のお土産を買ってきてもらう関係じゃないと思ってた。

たかが、同じ曜日に活動している委員会仲間にまで…。

「良いのよ、受け取ってちょうだい。悠理さんはお花が好きだって言ってたから、是非お土産を渡したかったの」

…そんなこと言ったっけ?俺…。

よく分からないけど…。小花衣先輩が俺の為に買ってきてくれたのなら、無下に断るのも申し訳なかった。

受け取る…しかないよなぁ。

恐悦至極。

「…済みません。ありがとうございます…」

「いいえ、どういたしまして」

「本当済みません…。何も返せるものがなくて…。俺もこの間、旅行行ってきたばかりなんですけど…」

などと、余計なことを口走ったのが間違いだった。

「良いのよ。私が勝手に買ってきたものだから、気にしなくて。…それより」

「…はい?」

「悠理さんも旅行に行ったのね。どちらに?」

…えっと。

…余計なこと言わなきゃ良かった。

「ヨーロッパかしら?それともアメリカ?オーストラリアとか?」

スケールが違う。スケールが。

済みません。ハムスターランドです。とも言い出せず。

ヨーロッパどころか、パスポートさえ持ってないよ。

「いや、あの…もっと近場ですから…」

「近場?アジア旅行かしら」

国内です、国内。

言えない。この本物のお嬢様に、電車でハムスターリゾート旅行に行ってきましたなんて言えない。

でも、俺と寿々花さんの旅行も、海外旅行に負けないくらいお金かかってると思うんだよ。

そりゃ、イギリス旅行ほどじゃないかもしれないけど。

優待チケットに、ハムスターランドホテルのスイートルームだからな?

それを二枚分だから、相当お高い旅行だったと思う。

だけど、「めっちゃ豪華なハムスターリゾート旅行です!」と言うのも…。

…なんか、張り合ってマウント取り合ってるような感じがして、言うに言えない。

「え、えっと…まぁ、はい…。近場です」

結果、俺は言葉を濁すことでこの場を乗り切ることにした。

情けない奴だよ。

「そうだったのね」

幸いなことに、小花衣先輩はにこにこ微笑むだけで。

それ以上は、何も追及してこなかった。

…ホッ。

俺にとっては、一泊二日のハムスターリゾート旅行だって充分贅沢だと思ってたけど。

新校舎のお嬢様達にとっては、海外旅行くらい珍しくも何ともないんだろうな。

つくづく、うちの寿々花お嬢さんは、お嬢様らしからぬお嬢様だよ。





…ちなみにお土産は、花の香りがするアロマオイルだった。

いかにも高そうだったから、使わずに、引き出しの中に封印しておくことにした。