「今年の家庭科の中間試験はね、実技試験だったの」

とのこと。

…家庭科って実技試験あるの?

それは珍しいな…。…え?珍しいんじゃねぇの?

あるところはあるんだろうか。分からん。

少なくとも俺自身は、家庭科の授業で実技試験なんて受けたことない。

でも…音楽の授業では、歌の試験とかあったな…。

あれも実技試験のうちに入るんだろうか。

それと同じで、家庭科にも実技試験があったってことか。

そういや、聖青薔薇学園女子部は、お嬢様学校だからな。

淑女の嗜みとして、他の学校よりも家庭科の授業に力を入れてるのかも。

それで、家庭科の実技試験なんてものが行われたのか…。想像だけどな。

「家庭科の実技試験って…何やるんだ?」

先生が見てる前で雑巾を縫え、とか?

見られてたら、緊張して裁縫なんて出来ねぇよ。

「お料理。今回は、先生の前で卵焼きを作るのが試験だったの」

あっ。

なんか…何となく、察した。

「そうしたら…。卵焼きが爆発して、家庭科室の天井が焦げちゃって…」

「…」

「それで、赤点だったの」

「…そりゃ赤点にもなるわ」

むしろ、赤点で済んで良かったな。

実質、家庭科室放火未遂みたいなもんじゃん。

退学させられずに済んだんだから、それで充分だよ。

どうやったら、卵焼きが爆発するようなことになるのか。

「悠理君のオムライスを思い出して、悠理君の真似っ子して作ろうとしたのに…」

しょぼーん、と落ち込む寿々花さん。

俺がいつも作ってるのはオムライスであって、卵焼きではないぞ。同じ卵料理ではあるけども。

そこで俺は、ふと思い出した。

「そういや…試験の最終日、こうやって玄関でショック受けてたのは…」

「あぁ…うん、その実技試験があった日…」

「…」

…あの日か。

そういえばあの日、帰り際に雛堂が言ってたよな。

なんか焦げ臭い匂いがする、って。

あれはもしかして…寿々花さんの卵焼き爆弾が、新校舎の家庭科室を焼いた匂いだったのか。

嘘だろ、おい。新校舎と旧校舎まで、どれだけ距離が離れてると思ってるんだ。

あんた、本当…一体何をやったんだよ。

むしろ、どうやったら卵焼きの材料で、そんな高性能な爆弾を作れたのか、是非説明して欲しい。
 
このお嬢さん、多分錬金術師の類だよ。

「あの日、悠理君は大丈夫だよって慰めてくれたけど…。やっぱり駄目だったよ…」

「…そりゃ駄目だろ…」

まさか、家庭科室を爆破してるとは思ってなかったよ。

そうと知ってたら、俺だって見え透いた気休めなんて言わなかったっての。

「去年までは、家庭科の試験も筆記試験だったから…。何とかなってたけど」

「…」

「二年生からは実技試験になっちゃって、何ともならなくなっちゃった」

…成程。

それで、去年に比べて成績が下がった…って言ってるんだな。

ようやく理解したよ。