「好きにしろ」


お父様はただ一言だけそう仰った。

それで、十分だった。

客間に戻った私は、カイン様に微笑んだ。


「ねぇ、カイン様。私、愛のある結婚がしたいですわ。私に愛を教えて下さいますか?」

「私を落とすのは結構難しいかもしれませんけど」


カイン様は嬉しそうに微笑んだ。


「ああ、喜んで君に愛を教えよう」


ねぇ、カイン様。

知っていますか?

私の能力ではなく、言葉が嬉しかったと言われたのは初めてなのです。

きっと、もう私も愛を知り始めている。


聖女でも、悪女でも、幸せになっても良いでしょう?


だって、自分の人生を歩めるのは私だけなのだから。


fin