2人は窓枠の向こうで,キスをしていた。

優菜は恥ずかしそうに口を押さえて,どこか焦りを表情に浮かべながらも。

幸せそうに,佐久間くんを見ていた。

何で……

そう考えて,ハッとする。

そして何故か,悪いことをしてないのに私の身体には汗がだらだら。

佐久間くんは,私の彼氏。

じゃあ優菜はと聞かれると,2m向こうにゆったりと腰を下ろす……

響くんの,彼女……っ

気まずさに,息が詰まった。

え,なんであの人あんな平然と眺めてるんだろう。

えなんで,あの人さっきあくびして。

いい噂聞かないとは聞くけど,浮気の現場を目撃し,どんな気持ちなんだろうと思いチラ見すれば,ばちり。

目が合った響くんは,ひらりと私に手を振った。

ひゃうっと,私の喉の奥から変な音がした。



「仲間,だね」



仲間だね?

私は,数秒その意味に混乱してしまった。

そして外の光景以上の衝撃を,私に与えたのである。



「あの2人,少なくとも今年入ってからはずっとあんな感じ。新しい教室からはよく見えるね」



あんな感じとは,キスとかのことですか。

それが,2ヶ月以上前からということでよろしいでしょうか。

そしてただのクラスメートだったはずの響くんのセリフは,冒頭へと戻るのである。



『ねぇとーかちゃん。大事な親友の浮気広められたくなかったら……俺の彼女になってよ』



嘘でも冗談でも何でもいいんです。

お願いですから,誰か。

人間へと平気で噛み付いてくるこの人から,私を助けてください……!!!!!