抱えるように握った両手が震えていた。



「自分ばっかりで,桃花の気持ちも自分のしてることも考えられなくて。友達だったのに,その気持ちも裏切って傷付けて,本当に,ごめん,桃花……」



顔が見えない。

ただの友達だったはずの優菜の顔が見えなくて,私は水気を含んだままの瞳で優菜に近づく。

優菜の両手をきゅっと握ると,その震えは一層大きなものに変わって。

私は優菜の嗚咽と,何も見えていなそうな目を正面から見つめた。



「ごめん,ごめん……っっ。と~か,わたしっ,わたしさいていだっ……さいて……さいてい,だっ……た」



喉を痛めそうな泣き方に,私の頬も濡れていく。

良かった。

握った手は,ちゃんと人の温もりをしていて。

目の前に伝っていく雫も,私のと同じ色をしていて。

心だって,きっと……



「ごめんね……っ,もう,別れちゃうのかもしれないけど,私のせい,で。でも私ももう,好きなの,やめるから……っ」



全ては望まない,一欠片の許しを。

優菜は私に求めて,包まれた両手を脱出させてから,私にしがみつくように抱きついた。