「……うん」



私は1つだけ小さく喉をしゃくり上げて,応える。

どうしよもなかった。

まだ高校生の私には,難しかった。

だけど,謝ってくれた。

認めて,反省してくれた。

さよなら,私の好きだった人。

さよなら,私達の初恋。

……ばいばい,佐久間煌芽くん。

別れた後で,もう佐久間くんと話すことは1度もない。

たとえ来年同じクラスになっても,きっとお互い背を向けているんだと思う。

でも,仕方ないよね。

こうなる前に向き合えなかった,私のせいでもあるんだから。

お別れだ。

探せばきっといくつも見つかる,大切なお別れ。



「っ~……っ,と,……か」



ドッッと息が苦しく止まるような衝撃。

予想外の声に,私は佐久間くんと同時に身体を捻った。

最大まで瞼を持ち上げて,声も出せずにその人を見つめる。

弱々しい声で,苦しげに開けたドアを両手でつかむのは



「ゆう,ゆう……ーな?」



何で?

はっ……とこぼれた吐息が,静かな部屋に広がった。