「なっんで」



その言葉は,尻すぼみ。

最後には飲み込んでしまった。



「佐久間くんの好きな人って,誰なのかな。私は佐久間くんの彼女,だったけど。佐久間くんは私の事,好きだった?」



返事を貰う前に,勝手に過去にしてしまう。

自分のずるさを自覚して,それでも私はそこで口を閉じた。

佐久間くんの事が好き。

そう,前に伝えたね。



「好き,だった。じゃない。俺はっ,好きだよ,今も。桃花の優しいところも,安心できる素直な笑顔もっ……なんで,前の,誕生日の前も伝えたじゃんかっ……! 好きだよ,だから付き合ってるんだろ!」



前も,そう言ってくれた。

真正面から,大きな言葉を貰って。

やっぱりと再確認する。

その言葉は,きっと嘘じゃない。

嘘じゃないから,分からなくて。

理解できないから,悲しくて。

それを全て,答えて欲しい。

最後でいいから,理解できたらと思う。



「じゃあ……優菜は?」



私は佐久間くんから瞳を落として,小さく呟き囁くように尋ねた。

空気が,揺れる。

出来るだけ,出来るだけ密やかに。

核心だけ,尋ねる。