「どうせキャプテンの話でしょ」
「そんなに強いの愛って」
愛は剣道部に入っている。中学生から始めており、美月の知る愛は負けている姿のほうが多かった。
「高校に入ってびっくりするほど伸びてるらしいよ。先輩からは次のキャプテンだって言われてるって」
「そうなんだ」
幼い頃から何をやっても躓いて、でも諦めない。それが愛だ。その努力が実ったことは嬉しいがとても遠い存在に思えた。
「まぁいいや。今日のこといつか話してね」
「いつかね」
蘭の嬉しそうな表情がヒビの入った心に溶け込んだ。
あんなに雨が降っていたというのに帰ることには一粒として雫は落ちていなかった。
「蘭、部活頑張ってね」
「うん、美月も可愛すぎて攫われないよう」