「美月、大丈夫なの本当に。あんたが四駅乗り過ごすだけじゃなくてお散歩までして来るって今日、台風来るの!」
「たまたま寝ぼけてて気晴らしよ、あんまり気にしないでよ!」
少しして、開放されても蘭の質問攻めは止まらなかった。
「絶対に何かあったね」
「何もないから」
「落ち着けって蘭」
全力で怪しむ蘭を愛を笑いながら宥めている。こちらから見たらなんとも微笑ましい光景だ。
なんとか収まり、蘭が落ち着いた頃に男子生徒が扉から顔を出して叫んだ。
「愛!コーチが呼んでるぞ」
「ああ、分かった」
何かを理解したように愛は立ち上がり、申し訳無さそうに顔の前で手を合わせた。
「悪い、行くわ」
「はーい」
「行ってらっしゃい」
愛が居なくなると蘭が独り言のように呟いた。