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 桜の舞う季節。

 病室の窓はピンクに色づいていた。


「美月、ずごくきれいだね」
「ほんとだね」

 
 口元に酸素マスクをつけ、美空は管だらけの手で花びらを掴むように窓に手を近づけた。
 

「ひらひらしてる、落ちたときに人に踏まれなければいいけど」
「そうだね」
 

 綺麗な黒髪は電気の光を反射して艷やかに光っている。触ると消えてしまいそうな儚げな雰囲気を美空は放っていた。


「美月」

 
 力ない声が耳に響いた。

 
「九歳の誕生日一緒に迎えたいね。双子だからケーキもプレゼントも二倍で楽しいよね」
「うん、私も美空と誕生日パーティーしたいよ。綺麗なお洋服着て楽しもうね」


 広角も小さく上に上げて美空は言った。

 
「――…うん、とっても楽しみ」