そうこうしていると、美月の前に回り込んできた。
「元気だった?」
「朝陽くん……」
傘をさして、見慣れた姿で立つ朝陽が目に入った。最後にあったときより薄着だ。
「美月」
そう呼ばれたとき、涙が溢れた。ずっと呼ばれたかった名前。呼んでくれることはないと思っていた名前だ。とても嬉しかった。
朝陽はあの日のように美月を抱きしめた。傘を捨てて、二人とも濡れることも気にしないでお互いを抱きしめた。
「ごめん」
「いいの」
「ううん、ごめん。呼ぶのが遅くなって」
声には出さずに首を振った。
「本当にいいの」
そういうと抱きしめる力が少し強くなった。お互いを確かめ合うように抱き合った。