何かを悟った。今まで見たことがないほどに怒り狂う愛と涙を流す女性を見て、自分のやったことの重大さに気づいた。
「美月って…」
「お前が美空と呼んでいた人だ」
何かが自分の中で崩れた。彼女へやってしまった今までことが走馬灯のように流れる。
――俺は何回彼女のことを呼んだ。
放心状態で固まる朝陽に愛は小さくため息をついていった。
「美空は美月の亡くなった双子の姉だ。亡くなって八月で八年になる。お前が美空と呼んでいたのは妹の美月だ」
すべてを理解して泣きたくなった。
美空――……美月を何度傷つけただろうか。
掴まれていた服は離され、愛は気まずそうに小さく笑った。
「お前の好きな人って美月かー」
「…………」
返事ができなかった。何故かできなかった。