朝陽は流れるような動作で空を見上げた。
「綺麗な月だね」
「本当だね」
星も見えない真っ暗ななか、月だけが浮いていた。
『美しい月と美しい空。二つが支え合うと綺麗な夜空が出来る。どんなことがあっても支え合ってほしいと思って名前をつけたの』
ふと小さい頃に聞いた話を思い出した。両親が話してくれた美月と美空の名前の由来の話だ。
きっと空に浮かぶこの光景を願って名前をつけたのだろう。
そう思うとなぜか心が少し楽になった。
ゆっくりと歩いていたつもりが、いつの間にか家についていた。
次、いつ会えるかは分からない。もしかしたらもう会えないかもしれない。
ずっと見れなかった朝陽の美しい顔を見た。自分にけじめをつけるために。
「じゃあまた雨の日に」
願いを込めてそういった。
「うん、雨の日に会おうね美空」
扉が閉じる音がとても虚しかった。