ひまわり畑で数秒交わした口付けは、どうしてかほんの一瞬のように感じた。


 重ねられた朝陽の唇が美月からゆっくりと離れていく。


「朝陽くん……」
「……」


 何処か名残惜しく、期待した声で彼を呼ぶ。


 それに答えるように一瞬だけ重なるようなささやかなキスがされた。


 ちゅ、と小さな音とともに離れる。


 音は可愛らしいが気恥ずかしくて落ち着かなかった。


 朝陽の手が美月の頭の上に乗った。小さな子でもあやすように頭を撫でられる。 
  

「もう遅いから帰ろう」
「……うん」


 時刻は七時を超えている。連絡もなしにこの時間だと親は心配しているだろう。


「遅くなったから送るよ」
「ありがとう」