いけないことだと、断らなくてはならないと分かっている。朝陽にとっても美空にとっても今の状況は良くないことだ。
でも今の美月に断る事は出来ない。
――――私は、朝陽が恋している。
学校が終わった五時に会うことを約束していつも通り駅に降りた。
ふいに駅の向こう側に見える空を見上げた。
分厚い雲から降り注ぐ雨はガラスのように輝いていて、半透明な梅雨の光線は美月に一時の祝福をくれているようだった。
約束の時間の時には雨は止んでいて、少しすると朝陽が小走りできた。
「ごめん、待った?」
「ううん、大丈夫。それよりどこに行くの?」
そう聞くと、少し誇らしげに朝陽は笑った。
「覚えてないかもだけど、実は小さい頃に約束したんだ」
「約束?」
「そう、ある場所に連れて行くって」