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 美空と別れて、少しすると朝陽の降りる駅につく。


 未だ慣れない満員電車に、揺られこの中から出られるその時までじっと息を潜めた。

 
 上野ー!上野ー。
 

 それと同時に扉が開き、人がいなくなる。満員電車後の外の空気は東京といえどとても美味しい。


 少し歩いていると電話がなった。スマホに写った名前を見ていると『愛』と書かれている。


 流れのように電話に出た。


「何」
「電車降りたんだ。元気?」
「元気だけど」
「それは良かった。てか朝にしては会話できてるじゃん。いいことあった?」


 そう聞かれた瞬間、無意識に広角が上がった。照れ隠しにせっかくセットした髪をくしゃくしゃにしてしまう。


「実は好きな人にあった」
「お前そんなやついたのかよ」
「つい最近出来た」
「そうか、いつか紹介しろよ」
「いつかね」

 
 不思議か雨が弱まった気がした。