「本当に覚えてないの?俺のこと」
「ごめんね。記憶力がなくて」
「いいよ、もう九年も前だから」
  

 九年前。まだ美空の病気が見つかっていない頃だろうか。美空が元気だった頃を思い返して聞いた。


「ある日公園にいたら突然話しかけられた。遊ぼうって。それから毎日公園に行って遊んだ。それが六月かな。でも俺の引っ越しが決まったんだよ。それが八月。それで離れ離れになったって感じ。簡単に言ったら」
「二ヶ月間も毎日遊んだんだ」
「そう、学校も同じだったけど学校ではそれぞれの友達も遊んでたかな」


 九年前の八月はまだ病気が見つかっていないときだ。その一ヶ月後、美空は倒れて病院に運ばれる。

「俺の初恋は美空だよ」