「朝陽くん、なんで」
「今日は雨だろ。雨の日に自転車は無理だから」


 この二日間に朝陽が居なかった理由に一人で納得した。


「そうだったんだ」
「うん」


 不意に姿が反射する窓を見た。美月より遥かに高い身長に包まれるようにして美月は立っていた。


 その状況に急に恥ずかしくなる。


「朝陽くん。ちょっと横に行ける?」
「無理だね。横にも後ろにもいけない。前には行けるかな」
「来ないで、これ以上密接しないで」


 朝陽は何が面白いのかクスクスと笑った。
 そんな朝陽が面白くて美月も小さく笑った。


 あと二駅で美月の降りる東京駅だ。降りなくてはならない。


「最後に一ついい?」
「いいよ」
「朝陽くんと私っていつからの知り合いなの」


 そう聞くと朝陽くんはまた笑った。