あれから二日が経った。
この二日間、雨は降らず落ち着いた生活をしていた。そして朝陽は電車で見かけなかった。
毎朝変わらない満員電車。雨の日は特に大変だ。雨となると利用者がぐんと増える。
それに合わせて人々の濡れた傘が制服の裾を濡らしていく。
美月は風景の変わらない町並みをじっと見ていた。なるべく他人に体重をかけないように両足に力を込めて手摺を握る。
その時、背中が軽く押された。少しバランスを崩しかけるがなんとか立て直す。
「…すみません」
「いっ…いえ」
とても聞き馴染みの良い声に、反射的に振り返ってしまった。
「美空、おはよう」
驚きと動揺で声が出なかった。
感情の読み取れない表情で立っている朝陽と目があったとき、全身に電気が走ったような感覚がした。