「物騒なこと言わないでよ」
「本当に気をつけてね」
「うん」


 蘭はバドミントンラケットの入ったバッグを持ち、部活へと向かった。


 外は雨の香りが残っており、ジメジメと暑く夏の訪れ感じさせた。
 

 もうすぐ梅雨があける。そしたら本格的に夏が訪れるだろう。


 太陽に向けて小さく手を伸ばした。あの日美空がやったように。


「美月ー!」

 
 聞き慣れた声がして、顔を向けると愛がいた。


 剣道着を着た状態で渡り廊下から一生懸命に手を振っている。


「ぶ、か、つ!頑張ってね」
「うん!美月も気をつけてね」


 愛に聞こえるように大きな声で大きく手を振る。


 ようやく手を振り終わると、愛は先輩に呼ばれて戻っていった。


「頑張ってね」


 誰にも聞こえないように、小さく囁いた。