雨が窓を打ち付ける。
静まり返った電車の中はパラパラと雨の音が響き渡っていた。
朝の満員電車、もう乗り始めて一年が経った。
誰かのつけた香水の匂い、背中から感じる体温、苦痛に感じていたあの時はもう懐かしく、いつの間にか慣れてしまった。
じっと黙り込んだまま雨に濡れる窓からは、分厚い雨雲がはっきりと見てる。
その姿を見るだけで、こっちまで気持ちが沈んでしまう――――と涼風美月は思った。
やがて車体がゆっくりと右にカーブし、ビルの数が増えた。体の力が少し抜ける感覚がする。
この息苦しい箱の中から開放されるまであと三十秒だ。