新が、私に向かって頭を下げる。
うそ。私……振られたの?
ハンマーでガツンと殴られたみたいに、頭に強いダメージを受ける。
「俺、彩里のことそんなふうに見たことなくて。だって彩里はずっと、大事な幼なじみだったから」
そっか。そう、だったんだ。
幼なじみ以上だと思っていたのは、私だけだったんだ。
私は、こぼれそうになる涙を必死に堪える。
お願い。涙、まだ流れないで。
新の前でだけは、泣きたくないから。
「ううん。私のほうこそ、ごめんね。新が好きっていうのは……冗談だから。今のことは忘れて?」
新の顔も見ずにそれだけ言うと、私は逃げるようにその場から駆け出す。
校門を出てしばらく歩いていると、目からは次々と涙が溢れ出てきて止まらない。
「……っうぅ」
私、新に振られちゃったんだ。
失恋、したんだ。
新のこと、ずっとずっと好きだったのに。
あの告白は、冗談なんかじゃないのに……。
新は私のこと『大事な幼なじみ』って言ってくれたのに。
冗談だとか、あんな言い方しかできないなんて、私最低だよね。
小学校を卒業したこの日、私の初恋は儚く散ったのだった。