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それから数十分経って

「ふぅ、着いた!ここだよ花菜乃。」


その声を聞き、辺りを見回すとそこは緑が広がる土手の上だった。

もちろん、屋台も何もない。

目の前に見えるのは夜の闇で暗くなった川だけ。それと空。


「ここ?」

思わずそう聞いてしまう。


「そうだよ。ここ、ここね周りに何もないから花火がよく見えるんだよ。」

「…なんで?」

「えっ?」


「えっ?」って言いたいのはこっちだよ。

だって、せっかく初めての花火デートだったのに。

2人とも浴衣着て、出店回って、買ったものシェアしたり、食べあいっことかしたかったのに!

……全部できないじゃん。


「昴汰、全然かなのことわかってない!」

叫ぶようにそう言うと、さっきから少しずつ溜まっていたいらいらが爆発してしまった。