「な、な、なんで……これは、どういうことだ!?」

 絶叫した声はしわがれて、高い音も出せなくなっている。
 そんな蛙婆女を蔑むように見下ろして、剣が言った。

「龍鱗の力は返してもらった。分け与えた力を回収する、そんな簡単なことが、俺にできないとでも思っていたのか?」

「そんな……そんなバカな」

 老婆は手をかざし、力を発動しようとしたが、それは虚しく「振り」だけで終わる。

「おまえの力も余分に吸収させてもらったよ。利子のようなものだな。どうだ、普通の人間になった気分は?」
「あ……あ……嘘だ……嘘だぁぁぁぁ」
「その霊力だと……寿命も、並みの人間くらいになったんじゃないか。見た目と差異が出なくなってよかったな。せいぜい老後を楽しめ」

 元々、シビアな性格の少年は、お年寄りにも容赦がない。
 若干引き気味の公花だったが、それくらい酷いことをされたのだから、自業自得といったところだろうか。

「お、お許しください。私は、私は若さを取り戻したかっただけなのです……」

 床に崩れ落ち、顔を覆って泣きじゃくる老婆を見た公花は、やっぱり気の毒になって、隣に立つ少年を見上げた。

「剣くん……」
「お灸をすえただけだ。力を返してやるかどうかは、後で考える」

 にっと笑った金色の瞳にはまだ凶悪な力が満ち満ちていて、ちょっぴり背筋が寒くなった。