ひょいと空中で持ち替えられて、今度は尻尾をつままれ、逆さ吊りにされる。
 目下にはあんぐりと開けた大きな口が……。蛙婆女の口が大きく裂けて、赤い舌がのぞいていた。

「キィーーーッ!! キッキィー!!」
(食べないで! 私なんて美味しくないからーっ)

 ――そのとき。背後でドーンと雷のような音が轟いた。
 地面が震え、長くカタカタと揺れて、音が部屋中に反響している。

「な、なにごと!?」

 蛙婆女が音に驚き、指を離した。地面にポテッと落下した公花は、素早く起き上がり距離をとる。

 移動しながら音のしたほうを見れば、剣が閉じ込められている結界ドームが輝きを放ち、明滅を繰り返していた。

(あれは……!?)

 結界の内側で、龍のような形をした稲妻が荒れ狂っている。
 どうやら壁を破ろうと、神通力を放出したらしい。

 しかし……。
 雷は壁に衝突するも、それを破るには至らず。めちゃくちゃに反射して、剣自身の体をも傷つけている。

「愚かな……そんなことをしたら、黒焦げになってしまいますよ?」

 蛙婆女が苦笑した。

 公花は結界の壁に駆け寄った。

『剣くん!』
『公花……待っていろ、すぐに助ける』

 蛇の体は自ら放った刃に傷つけられてボロボロだ。
 ただでさえ、ほとんど力を使い果たして弱っていたのに、このままではただでは済まない。