更衣室で着替えようと思いながらも手が動かなくて。
直生、早く来て。
直生が来てくれたら遥生と直生を見間違えたんだと分かってもらえる。
「湯川くん! 聞いたよ。可愛い彼女と手繋ぎデートしていたんだって?」
「マジないよ。湯川くんに彼女がいるなんて、ここにいる全員知らなかったんだからー」
そんな女の子たちの会話が聞こえたから、直生か遥生が来たんだと思って、更衣室のカーテンを少し開けて撮影室を覗いてみた。
そこには直生が立っていて、女の子たちに囲まれている。
「ごめん、僕は遥生じゃないから」
「湯川くん、何言ってるの? 噂になってるよ。さっきまで一緒にいた子は彼女なんでしょ?」
「えっ? 遥生が女の子と一緒にいたの?」
「湯川くん面白いこと言うね。もう何人も見てるんだよ。いまさら隠そうとしたって無駄だよ」
「えっと。僕は遥生じゃなくて双子の兄で・・・」
直生が困り果てているから黙って見ていられないよ。
「直生っ!」
そこにいた全員が私の方へ振り向いた。
「あっ! 夏芽。そこにいたの。探したよ」
女の子たちが私と直生を交互に見て、私に質問してくる。
「直生、って誰?」
「湯川くんとあなた、知り合いだったの?」
直生は全く何が何だか理解していないようなので、私が説明しなきゃだめだよね。