「返済しなければ、ずっとここにいることになるが?」

「それでいい。そうしたい」


それは夏波の切実な願いだった。
平穏な生活を捨ててしまうかもしれない。

もう二度と元の生活には戻れないかもしれない。
それでも、全く別の世界へ伊吹と一緒なら行ける気がした。


「わかった。それなら今日から夏波は俺の抱き枕になれ」

「抱き枕?」

「そう。もう枕の下にアロマを準備しておく必要はない。夏波自身に香りをつけて、一緒に眠るんだ」


伊吹の両手が夏波の体を抱き寄せる。
そのままふたりで横になると、伊吹はすぐに目を閉じた。