「夏波を借金のカタにもらった」


照明が落とされた暗い部屋の中。
ベッドに座った伊吹が重々しい声で言う。


「はい」


隣に座る夏波が答える。


「夏波が背負っている借金は残り20万円ほどだ」

「わかっています」


今までの仕事ぶりから10万円は返済されたことになったらしい。
ホッとすると同時になんだか寂しい気がしてしまう。


「残り20万円だが、返済する気はあるか?」

「それって、どういう意味?」

「返済が終われば、ここから……」


そういう伊吹の言葉を夏波は左右に首をふることで遮った。
もうどこにもいかない。

ずっとここにいる。
ここにいて、伊吹のためにアロマをたく。