たった一週間ほど一緒にいただけなのに、彼氏の元から逃げ出してしまうほど、自分にとって伊吹の存在が大きくなっていることにも。
だけど伊吹は動かない。

目は閉じられたままで開かない。


「ねぇ……お願いだからっ」


声がひきつり、出てこなくなる。
夏波は伊吹の背中に抱きついて嗚咽した。

こんなのひどい。
あんまりだよ。

この人は私を助けてくれた、優しい人なのに……!
涙が溢れて止まらなくなったとき、大きく息を吸い込む音が聞こえてきた。

そして伊吹の体が横向きに動く。
夏波が慌てて体を起こすと伊吹が眠そうな目を開いたのだ。


「伊吹、生きてたんだ!」

「夏波? なんで、お前……」