「伊吹、伊吹大丈夫!?」


大きな背中を両手で揺すっても返事はない。
徐々に焦り始めた夏波の脳裏には、父親を起こしに行ったときの映像が蘇ってきていた。

何度呼んでも返事はなかった。
布団の上から体をゆすっても反応はなかった。

そして布団を上げてみると、血の気を失い、白い肌の父親が眠っていた……。
ゾクリ。

全身に鳥肌が立つ。
イヤだ。
もうあんなのはイヤだ。

誰にも死んでほしくない。
あんな風に、眠っている間にいなくなるなんてこと!!


「伊吹、お願い目を開けて! 死なないで!」


両手で強く体を揺する。
そしてまた涙がボロボロとこぼれていた。
伊吹がこの世からいなくなってしまうなんて考えられないことに気がついた。