夏波も母親も出かける時間になっても起きてこないことを心配して、夏波は寝室へ向かった。


『お父さん?』


布団は膨らんでいるのに声をかけても返事がない。
異変を感じた夏波が駆け寄ったときにはもうすでに、息をしていなかった。
母親の生活が荒れてきたのはその時からだ。

父親の49日が終わるより前にまずパート先をやめた。
これから先は自分のやりたい仕事で稼いでいくと母親は息巻いていた。

その仕事というのが、男にこびて生活費をもらうことだったのだ。


『お父さんが悲しむよ』

『死んだ人が悲しむわけないでしょう』


母親は夏波の言葉を一笑した。
元々、母親も慣れない外での仕事に疲れていたんだろう。

だから誰かに助けてほしくて、男の人に声をかけるようになったんだ。
夏波はそう思うことにした。

家に戻れば母親と見知らぬ男が仲良くしている。
それを見ないために、アルバイトの時間を伸ばしてもらった。